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整理の根本は、まず、不用品を整理することに始まるといわれる。造船業は、非常に複雑な工事が多いので、その材料・部品の種類が多いから、残材や陸上部品が何かに使用されるだろうという思惑から、つい溜めておくことになる心理状態はある程度理解できる。しかし、これでは、狭い造船所の敷地内が物置同然になってしまうのは当然である。
どうしても廃却できないものは、止むを得ず保有しなければならないから、これは整然と極力立体的に格納して、いつでも必要に応じ取り出せるようにし、しかも、その格納位置も、その用途に応じて正しく区分されなければならない。
まず、工場内が一番乱雑になるのは、索具類、電線類や諸管類で、それが常設の場合は勿論仮設の場合でも、道路や足場等に沿って正しく導設されなければならない。これらを正しく整理するには、工場内に通路を正しく定めることで、これなくしては造船工場の整理は実施できない。
次に問題になるのは残材の整理である。
鋼材のスクラップを始め溶接棒のクズ、取付ピース類といったものが乱雑にほうり出されて通路まで塞いでいる。木造船所や木工艘装工場、製材所等はオカ層の散乱、堆積は目にあまるものがある。特に製材所で腐朽した木材の皮が焼却されずに新村と共に同居しているのをみると、木材の腐朽菌伝染の恐ろしさに対する認識の少なさが認められる。
整理・整頓の終局にくるものは、スクラップの売却か、焼却か、廃棄かになるが、売却できるものはよいが、できないものは焼却か廃棄以外にない。焼却も少量の場合には野天か、焼却炉で処分できるが、大量となった場合は、公共の焼却場のお世話にならなければならない。廃棄は焼却のできないものに対する処分法であるが、これは公認の埋立地でもないかぎり実行できない。この廃棄物の処分は公害問題とも関連するので、その地方地方の公共団体とよく連絡をとって実施しなければならない。なかでも木造船の廃船などは、造船所附近の港湾の至る所で見受けられ一種の社会問題になっている。こうした1企業だけでどうにもならないようになっている部門もある。
その次に問題になるのは、船架や船渠における船内・外の清掃から生じた汚物、廃物、廃油等の処分である。また、造船所の船架の位置によっては、港内の浮遊物が大量に打上げられる場合もあるので、これまた造船所の整理上、頭を痛める問題点である。
いずれにしても、造船所内の整理・整頓は強力に行わなければ、工程の合理化は勿論、の節約、工数の軽減を始めとした原価の低減を図ることは困難で、そのうえ安全管理をもすることはできない。

 

 

 

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